月別アーカイブ: 2020年6月

174 枕経藉書

今日の読売新聞朝刊の社会面に、「先月 本が大売れ」という見出しを見つけました。
5月の紙の出版物の売り上げが前年比111.2%を記録し、2008年7月の調査開始以来、最高の伸び率だったそうです。

小中学校などの一斉休校により、児童書や学習参考書が大幅増加となったほか、「鬼滅の刃」など人気のマンガが、コミックの売り上げを前年比1.5倍以上に押し上げたそうです。

巣ごもり需要の高さがうかがえる結果だと思いますが、印刷業界に身を置く者として、このニュースを非常に嬉しく思います。
私の本業は商業印刷ですから、出版業界とは異なりますが、紙の本の需要が増えたという知らせは朗報です。

先月は新型コロナの影響で休業していた店舗も多く、営業を継続した約1,500店に限ると、134.2%の伸びだったとか。
都市部の大型書店はほぼ休業していましたから、街中の書店が売り上げを伸ばしたのでしょう。

私は書店、特に大型書店が好きなので、営業を再開を心待ちにしていました。
それ故、先日神保町の三省堂書店と丸善丸の内店を久しぶりに訪れて、ひときわ楽しい時間を過ごすことができました。

大好きなノンフィクションをはじめ、新刊の小説などを結構買い込んだのですが、あっという間に読み終えてしまったので、今日は有隣堂へ出向きました。
レジでズッシリと商品を受け取った時、ちょっと買いすぎたか・・とも思いましたが、全国民へ支給される10万円の使い途としてはまあいいか、と思ったりしています。

ところで、新聞には、専修大学の植村教授(出版学)のコメントも掲載されていました

多くの人は子どもの頃から、教科書をはじめ紙の本に親しんだ経験がある。「ステイホーム」と言われる中で、「読書回帰現象」が起きた。一過性の現象に終わらせず、紙の本の良さを見直す機会にしたい。

紙をめくる。
しおりを挟む。
表紙には書店のカバーが付いている。

これが、私にとっての読書です。
紙の良さをぜひ見直していただきたいと思います。

173 雪中送炭

「ヒマがあったら読むかい。」

父が日本経済新聞の切り抜きをくれました。
『1位北大、2位横国大」という大きな見出しが目に入りました。

うちの大学が記事になるのは珍しいなあと思いながら受け取ると、企業の人事担当者から見た、大学のイメージ調査に関する記事でした。

調査は各大学の学生イメージについて「行動力」「対人力」「知力・学力」「独創性」の4つの側面で評価したもの。
北大は、2026年の創基150周年に向け、国際社会で活躍できる人材育成に努めているそうで、その結果が数字として現れたと言えましょう。

総合2位に輝いた私の母校・横浜国立大学は、行動力と対人力で2位だったほか、4部門全てで高評価を得たそうです。

3位以下も名古屋大学、京都大学、東北大学が名を連ね、上位10校は全て国立大学。
因みに、早稲田は12位、慶應は15位だったそうです。

ランキングの対象となった大学は、有効回答数805社からの回答数が一定水準以上に達した156校。
156校中の2位ですから、誇らしいですね。

この記事が新聞に掲載されたのが6月3日木曜日。
そして、偶然にも同じ日に、大学からメールが届きました。

その内容は、新型コロナの影響でアルバイト先を失ったり、また、親が経済的に困窮して学業継続の危機に晒されている学生への支援をお願いしたいというものでした。

大学は、遠隔講義受講の環境整備の支援や、PCの貸与などを柱とした「横浜国立大学緊急学修支援事業」第一弾を既に実施したようです。
しかし、長期化が予想される新型コロナ対応に備え、学生支援の枠をさらに広げるため、「緊急学生支援寄附金」への協力を卒業生に依頼したのでした。

具体的には、一人10万円の緊急生活支援奨学金を200人以上に支給するとのこと。
即ち、2,000万円以上が必要です。

6月5日までに、既に1,600万円近くの支援が集まっているようですが、私もわずかばかり協力いたしました。
近々振り込まれるであろう国からの特別定額給付金の一部を充当しようと思っています。

横浜国大のサイトを見ていたら、学生への食料支援も行っており、6月2日には「米2キロ、カップ麺1つと缶詰」が事前予約した100名に配布されたようです。

ただ、心なしか、物量的に手薄な感じがします。
食品業界で活躍するOBにも協力を仰ぎ、より分厚い支援ができないのかなと思います。

食料支援といえば、松山市が今月から経済的に困窮している市内の学生を支援するためのプロジェクトを始めたそうです。
「学飯」と銘打ったこの取り組みは、多くの学生アルバイトの受け皿となっている飲食店がコロナ禍で大きな打撃を受け、学生の困窮が自助努力で解消できなくなっている状況を打破するため、学生に食事券を配布する活動です。

市民や民間企業が一体となって無償食事券を配布する試みは全国でも珍しく、関係者の努力に頭が下がります。
公式サイトによると、協賛金はまだまだ目標額には達していないようですが、今後支援の輪が広がることを期待したいと思います。

大学生の差し迫った困窮ぶりは、学生団体「高等教育無償化プロジェクトFREE」が行ったアンケート調査が如実に物語っています。

これは、全国の大学生や短大生、大学院生ら1,200人を対象に実施した調査で、「経済的理由で退学を考えている」と答えた学生が20.3%にも上ったそうです。

今年度、大学や専門学校などで学ぶ若者は、ミレニアムベイビー世代が中心のため、そもそも人数が多いそうですが、その中で5人に1人が退学を考えているとは、極めて深刻な事態です。

政府は、困窮する学生に対して、総額530億円規模の支援策を講じることを決めましたが、可能な限りの支援を時機を逸することなく、迅速に進めて欲しいと願います。
また、特別定額給付金の10万円を、優先的に配布することはできないものでしょうか。

学生の学びを支えることは、未来への大切な投資です。
コロナプアで世代ごと未来を奪われるようなことは、断じてあってはならぬと思います。

172 解衣推食

新型コロナウイルスの感染拡大により、世界中が甚大な被害を被っています。
我々の業界も、もちろん例外ではありません。

全日本印刷工業組合連合会が行ったアンケートによると、4月時点の売上への影響は「前年同月と比べて大幅に減少した」と回答した組合員企業は60%で、「僅かに減少した」の31%を合わせると9割以上が影響を受けました。

また、日本製紙連合会の紙・板紙需給速報によると、4月の印刷・情報用紙の国内出荷は前年同月比19.7%のマイナスでした。
とりわけ大幅な減少だったのは、カタログやチラシに使われる塗工紙で、25.9%減となりました。

4月上旬には、日本印刷産業連合会会長が新型コロナウイルス感染症の陽性が判明したとのニュースもありました。

一方、海外では、アメリカのビジネスや技術ニュースの専門ウェブサイト「Business insider社」が今年2月、「今後10年で雇用が大きく減少する20の産業」を発表しました。

上位はアパレル関連が多くを占めますが、印刷業界は堂々の14位。
印刷機のオペレーターは2028年までに11.8%雇用が減少、製本関連では労働者が15.2%縮小する可能性が高いと予想されています。

そもそも衰退産業の印刷業界は、新たなウイルスとの戦いでさらに厳しい状況に追い込まれています。

しかし・・、
負の要因ばかり考えていては、先に進めません。

とにもかくにも、弊社は社員が誰ひとり感染せずにここまで来られました。
元気ならば、頑張れます。

非常事態宣言は解除されました。
今日から月も変わりました。
積極的な営業活動はまだ憚られますが、気持ちを新たに明日に向けて歩みを進めていきたいと思っています。

この新型コロナウイルスとの戦いは、ある程度長期戦になることでしょう。
しかし、ポストコロナの時代が必ず到来します。
そして、その姿は従来とは大きく転変することでしょう。

「我々は今、歴史的岐路にいる」という表現は満更大げさではないかも知れません。

在宅勤務やビデオ会議の習慣化、大都市への一極集中の緩和などの労働環境における変化のみならず、人々の価値観にも大きな変化が生じているようです。

即ち、ステイホームを通して、これまでの無駄な消費や生活習慣が浮き彫りになり、簡素な方向へ舵を切る人が増えると言われています。

私も緊急事態宣言下にあって、思うことはありました。
飲食に耽溺していたかな・・。
不要な買い物をしていたな・・。

そして、何よりも強く感じたのは「人との関わりや繋がりの大切さ」です。

料理はテイクアウト、買い物は通販で置き配。
こればかりでは飽きてしまうし、充実感や満足感が足りません。
皆で楽しみ、繋がりが実感できることを求めるのは、いたって自然な流れでしょう。

今後は、個々人が自主的な管理のもと価値観を創造していく時代になるのだと思います。