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241 至恭至順

受験シーズンの到来を告げる大学入学共通テストが、来週末に迫りました。

私の大学受験は1980年。
共通一次試験が始まった翌年にあたります。

共通一次試験が導入される前の国立大学は、一期校、二期校に分かれていて、複数の大学を受験することが可能でした。
しかし、国公立大学の志願者全員が同じ5教科を受験し、国立大学の受験を1校に絞る制度が共通一次試験で、「空前の一斉入試」とも呼ばれた大改革でした。

私が受験した時代は、試験科目が国語・数学・理科・社会・英語の5教科7科目で、1,000点満点でした。
文系志望なのに、物理・化学・生物・地学のうち2科目を受けなければならないことに絶望感を覚えた一方、社会は倫理社会と政治経済を同時に選択できたのはラッキーでした。

受験地獄をさらに悪化させていると多くの批判が噴出し、また、マークシート方式を採用したことで「鉛筆をさいころのように転がせば解答が書ける」とも揶揄された入試改革でしたが、45年前、私は「東京大学」受験しました。
ネットで調べてみると、1980年の実施日は1月12日・13日のようですから、明日でちょうど45年が経つことになります。
半世紀近くの年月が流れたにもかかわらず、受験に関するほろ苦い思い出がいくつか鮮明に浮かびます。

高校3年生のとき、私は睡眠を2度に分けていました。
まず、学校から帰ってきてから数時間昼寝をします。
そして、両親の帰宅に合わせて起床し、夕食、入浴。
机に向かうのはその後ですから、勉強開始は22時頃になるのが常でした。

食べ盛りの高校生ゆえ、母親に夜食の支度もしてもらいました。
夜中に食べるお雑煮が、とびきり美味しかったことを覚えています。

夜中までずいぶん熱心に勉強していたように聞こえますが、実のところは勉強開始が24時頃になってしまったり、いきなり夜食を食べ始めたり、日付変更前に寝てしまったり、甚だ薄っぺらな受験生でした。

机の横にラジカセを置き、かすかなボリュームで音楽を聴きながら勉強することもありました。
メインに聴いていたのは山崎ハコさん。
なかなか微妙な選曲です・・。
大学生になったら弾けてやる! という意志の序奏だったのかと思います。

また、ドラマ「俺たちの旅」は、この頃の強烈な思い出です。
昼寝をする前に、夢中で観ていました。

「夜勉強するために、早く家に帰って寝なきゃいけないんだ」と吹聴し、高校の友人を振り切るように帰宅の途についていましたが、ドラマに間に合うよう早く帰りたいというのが本音でもありました。

調べてみると、初回放送は、1975年10月5日から1976年10月10日までの毎週日曜20時からだったようですから、私が夢中になっていたのは再放送だったことになります。
(全46話ですから、放送が1年がかりになるのもスゴイですね)

このドラマは、Wikipediaで以下のように紹介されています。

三流私学・修学院大学の学生カースケ、その同級生オメダと、同郷の先輩で早大OB・グズ六が中心に織りなす友情と青春群像を活写し、生きることの意味、悩み、喜びなどについて問いかける。

高校3年生だった山田少年にとって、このドラマの登場人物は、没入できる要素がふんだんにありました。

  • 主役の大学生・カースケ(中村雅俊さん)とオメダ(田中健さん)は、大学受験を控えた私にとっては憧憬であり幻滅でもある学生像でした。
  • 東大を目指す浪人生・ワカメ(森川正太さん)は、浪人への不安を増幅させる対象でした。
  • オメダの妹・真弓(岡田奈々さん)は、年齢=彼女いない歴だった山田少年に、日々、恋愛妄想を抱かせる存在でした。
  • バスケットボール部のマネージャー・洋子(金沢碧さん)は、キャンパスにはこんなステキな女性がいるのか! と、バラ色の大学生活を夢見るに十分すぎる魅力的女性でした。
  • グズ六の恋人で後に結婚する紀子(上村香子さん)は、将来の嫁さん像という身の程知らずな想像をかき立たせる大人の女性でした。

そして、エンディング曲の「ただお前がいい」に乗せて、番組終わりに表示される散文が印象的でした。

生きることの 本当の意味は 学校では 教えてくれない

友情なんて 大げさなものじゃない オレはただ お前が好きなだけだ

明日のために 今日を生きるのではない 今日を生きてこそ 明日が来るのだ

これらのフレーズは、青春ど真ん中だった山田少年の心を、毎回えぐりました。
海に沈む夕日に向かって「バカヤロー」と叫びたくなるような夕刻を、何度も過ごしました。

受験とテレビに関しては、もう一つ思い出があります。
高校の某先生が、冬休みに入る直前、受験生の我々に向かってこう言いました。

今年の大晦日の夜は紅白歌合戦を観るな!
放送時間帯は机にいろ。
例え勉強はしていなくても、テレビは観ずに机にいろ。
オレは紅白歌合戦も観ずに大学受験に備えていたんだ、という気持ちになれるぞ!

なにをアホなことを! と今は思います。
3行目なんて、全然意味ないじゃん! と・・。

しかし、
実は、
ワタクシ、
何故か、
この先生の教えを守ったのでした・・。

因みにこの年の紅白歌合戦の視聴率は77.0%。
こんな時代だから通用した戒めなのでした。