194 不将不迎

若い頃から股関節に違和感がありました。

初めて医師の診察を受けたのは40代の頃。
親しかった、大学病院の整形外科部長に診ていただきました。

ちょっと変だなと感じた時はこんなストレッチをしていました、と努力の一端を告げると「なんで余計なことするかなあ、そもそも先天的なものだから治らないよ」と叱られました。
治らないんですか?と確認すると「治らないどころか年齢とともに悪化するよ」と宣告されました。

そして、予言は的中しました。
痛みを感じる頻度が増し、数年前からは、遂に正座や胡座が出来なくなってしまいました。

そんなとき、仕事でお世話になっている80歳代の女性社長さんが、人工股関節手術を受けたと聞きました。
明日は我が身。
自分の症状を伝え、今後の道標となるはずのお話しをたくさん伺いました。

その社長さんは、最近では「調子はどう?痛い?」と仕事の話の前に、必ず私の体調を気遣ってくださいます。
早く専門医に診てもらいなさい、と親身な忠告を再三受け、また、お友達のご主人が同じ手術を受けた医師まで教えていただきました。

ずっとのらりくらり過ごしていましたが、昨今は痛みも増してきたため、そろそろ潮時かと観念し、今年6月、ご教示いただいた股関節の専門医を訪ねました。

レントゲンを撮ったあと医師の問診を受け、若い頃から違和感があったこと、そろそろ潮時だと観念し、意を決して受診に来たと告げました。

レントゲンの結果では特に異常が見当たらず、医師は私をベッドに寝かせ、足を様々な方向に曲げては「痛い?」と聞きました。
どこを押されても、どの方向に曲げられても痛みを感じないので「痛くないです」と返事を繰り返す私を椅子に座るよう促したあと・・、

「まあ、潮時ではないよね(笑)」
「え?入院や手術といった宣告を覚悟してきたんですが・・。」
「今はまだそういう段階ではないよ。」
「先生、こんなに痛いのに、そんなあっさり帰さないでくださいよ」
と冗談めかして言う私に半ば呆れた医師は、私をもう一度ベッドに寝かせ、「これは」「ここは」と曲げたり押したりを繰り返しました。

「大きな問題はないと思うけど、MRI検査で詳しく調べてみましょう。」とその日は一件落着となりました。

後日、MRI検査を受けた後、診察室で先日の医師が画像を見ながらマウスをスクロールしていると、先生の手が突然止まりました。
モニターには、真っ白な円が写し出されていました。

「これか」と言う医師。
「あちゃ、腫瘍だ」と思い、心がザワザワする私。
「これね、水。ガングリオンって聞いたことある?」

素人が勝手に腫瘍だと早とちりしたことを恥じるとともに、医師の説明を聞きました。
結局のところ「変形性関節症」との診断で、水を抜いても痛みの除去には結びつかず、残念ながら根本的な治療方法はないことでした。

「運動しないのはダメだけど、過度な運動もよくないです。治療方法もないので今後は経過観察ということになります。一番納得いかないかな?」

そんな診断から数ヶ月。
本日、改めて医師の診断を受けましたが、特に変化はありませんでした。

「先生、あと10年、 もちますか?」と尋ねると、
「今、59歳でしょ。うーん、多分ムリだね。5年後には手術だと思っていた方がいいと思います。」
「手術って、人工・・」
「そう、人工股関節。」

覚悟はしていましたが、少々ショッキングな宣告でした。
でも、とてもフランクで、信頼できる医師だと感じました。

将来、手術を受けることになった時、生活習慣病を持っていると厄介なことになるので、太らないように節制してください、とも言われました。

60目前にして、放縦な生き方を戒めるきっかけとなりました。
過ぎたことは悔やまず、そして、まだ見ぬ未来をアレコレ気に病むことなく、元気な老人を目指して、小さな努力を積み重ねていこうと思っています。

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