月別アーカイブ: 2023年6月

219 翻雲覆雨

今日の読売新聞朝刊の編集手帳に、蛙化現象に関する記述がありました。
以下に抜粋します。

グリム童話の「かえるの王さま」に由来する「蛙化現象」が若い世代で流行語になっている。
元々は心理学の言葉だという。
好きな相手に好意をもたれた途端、嫌悪を抱く心理を指す。
SNSには、心変わりの瞬間が数多く投稿されている。
〈彼氏とドライブしてたけど途中でガソリン入れる奴まじ無理〉
ささいな振る舞いで気持ちが冷めることを蛙化と称している。
以前は食事中に鼻毛が見えて急に冷めたとか、わかりやすい理由だったものだけれど。

『蛙化』なんて聞いたことないなとつぶやきながら、隣にいたセガレに「おい、蛙化現象って知ってるか?」と尋ねてみると、

「元々は童話からきてるんだけど、今使われているのは、理不尽とも言える理由で突然冷めちゃうみたいな意味だね。」

すんなりと100点満点の答えが返ってきました・・。

調べてみると、Z世代が選ぶ2023年上半期の流行語ランキング1位は「蛙化現象」だったそうです。
若い世代では、常識なんですね。
最近、ジェネレーションギャップを感じることが頻繁になりました。

心変わりの瞬間についてネットで調べてみると、以下のような例が掲載されていました。

  • 泳いでいるときの息継ぎの顔
  • フードコートでお盆持って彼女を探している姿
  • 改札でICカードが反応せず立ち往生している姿

確かにちょっとカッコ悪いけれど、笑って済ませてあげようよって、若い頃からだらしないオジさんは思います・・。

そう言えば、カミさんから似たような話を聞いたことがあるな・・、と思っていたら、

「アタシ、中学生の時に片思いしていた男の子の体操着に『汚れの首輪』を見つけた瞬間、嫌いになったことがある!」

カミさんもそんな昭和の青春を過ごしていたんですね。
まあ、分からなくもないかなと思います。

蛙化現象について、心療内科の専門家は以下のように分析しているようです。

  1. 理想が高いことが原因
  2. ちょっとしたことで幻滅しやすく、気持ちが冷めてしまう
  3. 相手を100点か0点で判断してしまう

蛙化現象は病気ではないものの、繰り返し起こしてしまうと、「自分は恋愛ができないのではないか?」「このままでは一生結婚できないのでは?」と不安を感じる人もいるそうです。

また、蛙化現象は相手に対して嫌悪感を持つだけでなく、自分に嫌悪感を持つことがあるとのこと・・。
自分から好きになって告白をしたのに相手を嫌いになってしまった場合、「相手に申し訳ない」と自己嫌悪に陥る心理は理解できますね。

これは、笑ってばかりはいられない問題かも知れません・・。

そう言えば、かれこれ45年前のこと。
後輩の女の子と2人で出掛けることになり、それを知った先輩が真顔でアドバイスをくれました。

「ヤマダ。喫茶店でケーキ食べることになったらな、ミルフィーユは頼んじゃだめだぞ。アレは横に倒さないといけないし、倒したところでフォークじゃ切りづらいんだ。しかもボロボロこぼしやすいからキレイになんか食べられない。彼女に嫌われるから、ゼッタイやめとけ。」

三藤さん、今もミルフィーユを見るたびに先輩を思い出します。

218 局面打開

大学生のとき、友人と車で伊豆半島一周旅行をしました。
途中、南西端の波勝崎苑猿園に立ち寄り、ニホンザルを見ました。
そして、おとなしく座っていた一匹の猿に近づき、並ぶようにして写真を撮りました。

「サル〜、ありがとね〜」と猿とは反対の方向を見ながら去り際に言うと、突然左のふくらはぎに痛みを感じました。
その猿が歯茎剥き出しで、私の足に噛み付いていたのです。

すぐに猿は逃げていきましたが、ズボン越しに噛まれたふくらはぎには、猿の歯型が残りました。

その夜のこと。
民宿の部屋で足を投げ出してくつろいでいた時、友人がボールペンの先で私の足に残った歯型の真ん中をつついていました。

気配を感じて振り向くと・・、

「感じないの?ヤバっ!」

確かに振り向いたのはつつかれた痛みからではなく、友人のクスクス笑う声に反応したのでした。

猿菌とかあるのかね?
何科に行くんだ?
カルテに「猿に噛まれて受診」って書かれちゃうのか?

茶化しまくる友人たちの言葉が、もはや冗談に聞こえなくなっていました。

東京に戻り、すぐにかかりつけの皮膚科医を訪ねました。

「山田さん、久しぶり。犬に噛まれたんだって?」
「あのー、犬じゃないんです・・」
「犬じゃないの??」
「はい、猿です・・」

いつも優しい斉藤先生は一瞬驚いた表情を見せ、隣りにいた看護師さんは、笑いを堪えているようでした。

結果的に大事には至りませんでしたが、それ以来、猿は私の中で怖い動物ランキングの上位になりました。
日光で猿が観光客から食べ物を奪うニュースが一時頻繁に報道されていましたが、とても私は直視できませんでした。

因みに、アクシデントの起こった波勝崎苑猿園は、昭和32年(1957)にオープンして以来、多くの観光客で賑わっていましたが、来園者が次第に減少し、2019年9月に休園となってしまいました。

https://www.asahi.com/articles/ASM9S5W09M9SUTPB01B.html

しかし、野生のサルの生命保護と近隣の農業被害の防ぐため、伊豆地域で動物園を運営する企業がクラウドファンディングを行うなど、事業の継承に努め、2020年5月7日に「波勝崎モンキーベイ」と名称を変更して復活したそうです。

ここで暮らすニホンザルたちは野生の猿です。
動物園のように檻はありません。
ただ、野生の猿ですが、食べものを人間から貰っているため、人に敵意は示さないと言われています。

私が足を噛まれたことには、何か原因があったのだと思います。
目を合わせてはいませんし、見えるところに食料は持っていませんでした。
でも、猿にとっては、私が善良な味方でなかったことは間違いありません。

私は子供のころからペットを飼ったことがないため、動物一般が比較的苦手です。
上手な扱い方や関わり方が分からないのです。
小学校低学年のころ中型犬に手を噛まれた経験のある私にとって、猿に噛まれたことで益々動物が苦手になってしまいました。

そんな私に、心を許してくれた犬が1匹だけいます。
仕事仲間の製本所で飼われていた真っ白なポメラニアンの「チャオくん」です。

チャオは私が工場に入ると、尻尾を振りながら駆け寄ってお腹を上にしてゴロンと寝転がり、「お腹をさすれ」と要求します。
そして、私がお腹をさすってあげると、極楽な表情を浮かべるのです。
それはそれは私にとって、堪らなく癒やされる時間でした。

子どもが成長して家を出たことで、ペットを飼い始めた友人が複数います。
今後を考えると、ペットに好かれるオッサンを目指すことも重要かも知れません。