先日の続きです。
「生ビールがあるじゃないか♪」
は小学校時代の友人の披露宴でした。
新郎側ではなく、新婦側の友人です。
あ、正確には新郎新婦ではなく、新郎妊婦だったのですが(笑)。
そしてこの妊婦、じゃなくて新婦。
職業は司会者なのです。
披露宴やイベントなどでバリバリ活躍中のプロの司会者なのです。
当然、職場の方々も招かれています。
なのに、二次会の司会を、私にやって欲しいというのです。
「披露宴のスピーチはやるよ。でも司会はダメだよ、いくら二次会でも」
謹んでお断りしました。
当然です。
プロの司会者がたくさんいる前で、素人の私がどうして司会を務めることができましょう。
「披露宴の司会は、プロの仲間に交替でやってもらうの。でも、二次会はプロに頼みたくないの。お願いっ!」
新婦の押しに負けて、結局引き受けることにしました・・。
恥をかいてもいいや。
所詮素人なんだから。
プロのようにできるわけがないのだから。
文字通り開き直りました。
そして、二次会は始まりました。
その二次会でもうひとつ、私は大役を担っていました。
イメージビデオです。
なぜ私が制作することになったのか、正確な経緯は定かではありませんが、画像の編集が好きだったことが高じて、引き受けることになったのでは・・。
内容は、新婦の幼少時代から現在までの写真をつなげたスライドショーです。
しかし、当時はPCソフトでさくっと制作、という時代ではありませんでした。
ビデオデッキにまず音楽を録音し、それから音に合わせて静止画を取り込み、テロップはタイトラーいう専用マシンで入れる、という手間のかかる作業でした。
二次会の中で皆さんにご披露しました。
自分で作った映像を人前で紹介するのは初めてでしたから、非常に緊張しました。
上映中は、妙な汗が止まりませんでした。
上映が終わると、皆さんから暖かい拍手をいただき、ホッとしました。
すると、新婦のお父さんが、泣きながら私に握手を求めてきました。
「感動したよ!やるやるとは聞いていたけど、やるねえ、山田くん!」
新婦の父は、やや酔っぱらっているようでした(笑)。
そして、二次会のエンディング。司会の大役もそろそろ終わりです。
参加者みんなでアーチを作り、新郎新婦を祝福するという企画がありました。
「それでは皆さん、ここから2列に並んでいただけますか?」
と皆さんにお願いをしました。
列が長くなっていくと、ついに会場の反対側にぶつかってしまいました。
・・・反対側までいったら、こちらへ戻るように並んで下さい・・・
頭の中にそんなセリフが浮かびました。
でも、ダメです。禁句です。
「戻る」はNGワードです。
披露宴で使ってはならない言葉って結構あるんですよね。
別離を連想させる「別れる」「切る」「割る」「去る」「帰る」。
再婚を連想させる「戻る」「繰り返す」などなど。
「戻る」がダメなことは認識していました。
「お席にお戻り下さい」ではなく「お席にお着き下さい」と言うんだぞ、とシミュレーションもしていました。
しかし、今回は状況が違います。
向こう側からこちら側に戻ってこなければならないのです。
「こちら側へ戻る」以外になんて表現すればいいのか・・。
「こちら側へ帰ってきて・・」
あ〜、これもダメ。
頭の中、真っ白になりました。
私は適切なボキャブラリーを持ち備えていませんでした。
結局・・・、
「向こう側までいったら、こちら側へ戻るように並んで下さい」
マイクでしゃべってしまいました・・・。
そうしたら、私の近くにいた新婦の職場の同僚、即ちプロの司会者の方が・・・、
「今、司会の方がおっしゃったように、向こう側の壁まで到着したら、
こちらへUターンして並んで下さい!」
まいりました・・。
脱帽、なんて表現では足りません。
その見事なタイミング、しかも、私に配慮した、優しい言い回し・・。
プロはやっぱりすごかったです・・。
お開きになってから、その方にお礼を申し上げに行きました。
・・口にしてはいけない言葉だとは知っていました。
でも私には適した表現が浮かびませんでした。
助けていただいて有難うございました・・。
すると、
「NGワードと知っているだけですごいことです。全体的にとても立派な司会ぶりでした。間の取り方が上手で、我々プロも勉強になりました。」
上手だったはずがありません・・。
立派な訳がありません・・。
上から目線という言葉がありますが、そんなかけらもありませんでした。
こういう所作ってステキだなあ、と感じました。
あれから、20数年。
まだまだ年齢相応の分別がない自分に、ハッとする思いです。
深く自省が必要です・・。