206 九夏三伏

先日、高尾山口へ撮影に行きました。

新宿から京王線に乗ると「ベストシーズンは、春夏秋冬です。高尾山」という広告が目に入りました。
コピーライターって才能あるなあ・・と思いながら、車中は読書を楽しみました。

到着したのは午前11時少し前。
好天の週末でしたから、かなりの人出かと予想しましたが、ご覧の通り、ほとんど混雑はありませんでした。

ネットで調べてみると、紅葉の時期やゴールデンウイークには、ケーブルカーが90分もの乗車待ちになるそうです。

2007年、高尾山はミシュランガイドで星3つを獲得し、世界中の観光客が訪れるハイキング・トレッキングの名所になりました。

そして、2010年には「山ガール」という言葉が流行語大賞の候補に上がり、2016年には山の日が制定され、登山人気に拍車がかかりました。

さらに、コロナ禍にあって、登山やキャンプは感染リスクが低いアウトドアレジャーとして脚光を浴びています。

ここまで条件が揃っているのに空いていたのは、コロナの感染者急増により外出を控えた方が多かったのでしょうか・・。
それともインバウンドがいない影響なのでしょうか・・。
そもそも真夏は、登山客が少ないのでしょうか・・。

登山、キャンプ、釣り、カヌー、ヨット、シュノーケリングなどなど、アウトドアスポーツに全く縁がない私には分かりません。

撮影を終え、「髙橋家」というお蕎麦屋さんに入りました。
天保年間(1830~1843)に創業した老舗で、店内には樹齢150年余の柿の木がありました。
冷たいとろろ蕎麦は、暑くてバテ気味の胃袋にもするすると入っていきました。

考えてみると、この付近に来るのは、40年以上前のあの日以来だと思います・・。

高校3年生だった私は、大学受験がひと通り終わり、中央大学への入学が決まっていました。
入学金に加えて授業料も振り込み、(記憶が正しければ)1年D組19番というクラス分けと出席番号も知らされていました。

そんな時、横浜国立大学から補欠合格の一報が届きました。

中央大学の入学試験要項を確認すると、授業料支払い後に入学を辞退する場合は、大学の事務に退学届を提出すること、とありました。

そこで向かったのは、中央大学多摩キャンパス。

今は「中央大学明星大学駅」という、大学に直結したモノレールの駅がありますが、当時は高幡不動駅で動物園線に乗り換え、終点(次の駅)の多摩動物公園駅から10分ほど歩きました。
通学路の途中には、「マムシに注意」みたいな看板があった記憶もあります。

キャンパスに着いて事務室を訪ねると、スタッフが忙しいそうにしていて、私になかなか気付いてくれません・・。

そこで、「退学届を出しに来ました!」と声高に言うと、奥から女性スタッフが小走りにやってきました。

「お待たせしてすみません・・」と対応してくださる様子から、退学届という意味の大きさを感じた気がしました。
腫れ物にさわるような感じも少し伝わってきて、気恥ずかしい思いがしました。

一旦は入学を決意した大学ですから、正門を出る時、一礼しました。

「任意の寄付金、300,000円は慌てて払わなくて良かったかも。」
「退学届を出したってことは、中央大学中退、横浜国立大学卒業がゆくゆく私の正しい学歴になるのかな。」

駅に戻りながら、そんなことを考えたのを40年経った今も覚えています。

考えてみると、多摩動物公園駅と高尾山口駅は、さほど近くはないですね・・。
まむし云々の看板はもう見られないでしょうし、残念ながら多摩テックはなくなってしまいましたが、40年ぶりに訪ねてみたい気がします。

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