133 斗酒隻鶏

社会人になって早34年。
仕事を通じて、多くの方とお目に掛かりました。

そんな中、最も印象的なひとりは、某化粧品会社の女性社長さんです。
私よりも2歳年下の、とても美形な女性でした。

初対面は、私がギリギリ20代だった頃と思います。
その数年後、彼女は結婚し、新宿で開催された二次会に私もお招きいただきました。
因みにこの時、「新郎新婦」は「新郎妊婦」でした。

妊婦、いや、新婦は私と一緒でお酒が飲めないのですが、一方、ご主人は大のお酒好き。
宴たけなわの頃には、ひな壇ですっかり出来上がっている様子でした。

そうこうしているうち会がお開きとなり、私が帰り支度をしていると、

「社長、一緒にタクシーで帰ろう!」

と彼女に声を掛けられました。
因みに、私は当時社長ではなかったのですが、いつもこう呼ばれていました。

「どうせあの人はこの後もどっかで飲むんだからいいの。先に帰ろう。」

結婚式の夜に別行動って、変な夫婦だなあと思いつつ、新婦の友人らとタクシーに相乗りしました。

ひとり、またひとりと下車し、結局タクシーに残ったのは我々2人。
旧知の仲とはいえ、昼間式を挙げたばかりの女性と2人だけ、というシチュエーションに、いささか違和感を感じはじめた矢先・・、

「社長、カラオケ行こう!!」

結局、私は、新婦で妊婦な人妻と2人だけで、深夜のカラオケボックスに行き、数時間大盛り上がりしたのでした。

今となっては、とてもいい思い出です。
出来ることなら、あの頃に戻りたいと思います。

何故なら・・、

42歳で彼女は亡くなってしまいました。
乳がんでした。

私にとって彼女の存在は「男友達」でした。
仕事を超え、性差を超え、とても親身な関係でした。

「社長、良かったね〜、これ持ってって!!」
私にようやく子供が出来たと知るや、我がことのように喜んでくれ、色々といただきものをしました。
亡くなる2年前のことでした。

「界面活性剤ってね、水と油を混ぜちゃうんだよ、社長はただでさえ危ういんだからシャンプー変えないと禿げちゃうよ」
そう言って、石けんシャンプーを勧めてくれたのは彼女でした。
今も年齢相応の頭髪量が維持できているのは、間違いなく彼女のお陰です。

「社長、タバコちょうだい!もう安定期に入ったから大丈夫!」
でも、大きなお腹の彼女にタバコを渡したのは、大失敗だったな・・。

「社長、B4の短辺って何センチ?えっ、257ミリ!?て~んさい~!」
天才でも何でもないです。そんなこと知らない印刷屋なんていませんから。

決して長いお付き合いではありませんでしたが、様々な思い出が蘇ります。

距離的な問題もあって、まだ、墓参が叶っていません・・。
彼岸の入りにあたり、亡き友へ思いをはせ、感謝のまことを捧げたいと思います。

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