自省」カテゴリーアーカイブ

016 泰山北斗

昨日の新聞一面に、iPS細胞から作った網膜の細胞を目の難病患者に移植する臨床研究の手術が行われたことが、大きく報じられていました。
京都大学の山中教授が生み出した「夢の細胞」が、誕生からわずか8年で実用に向けて新たな段階に入ったのだそうです。
様々な病気で苦しむ人々に大きな希望を与えた明るいニュースでした。

この新聞記事を読んでいて、ひとつ気づいたことがあります。
今回の手術に関わった先生方が、皆、私と同年代なのです。

iPS細胞の生みの親・山中伸弥先生は1962年9月4日生まれなので、私の一つ下。

臨床研究を率いた理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーは、1961年6月23日生まれだから私と同級生。

山中教授と記者会見に同席した、高橋政代先生の夫・iPS細胞研究所の高橋淳教授は、高校の同級生同士で結婚されたらしいので、必然的に私とも同い年。

執刀医である先端医療センター病院の栗本康夫先生は、高橋政代先生と京都大学医学部の同級生で53歳。ということは同い年か一つ上か・・。

う〜ん・・、同級生すごいなぁ・・。

36歳の若さでお亡くなりになったダイアナさんも同い年。あの訃報は悲しかった・・。
ほかには、俳優のジョージ・クルーニーさん。あんな格好いい中年になりたかった・・。
脚本家の三谷幸喜さん。溢れる才能に嫉妬し、19歳も年下の女性との再婚にも嫉妬し・・。
そうそう、女優の斉藤慶子さんはデビュー当時からのファンで、私の永遠の憧憬・・。

世界に誇れるって訳にはいきませんが、人生も後半にさしかかってきたこの年で、ひとつくらい胸を張れることを持っていたいなあと・・。

う〜ん、なにかあるだろうか・・。

008 華燭之典(2)

先日の続きです。

「生ビールがあるじゃないか♪」
は小学校時代の友人の披露宴でした。
新郎側ではなく、新婦側の友人です。 

あ、正確には新郎新婦ではなく、新郎妊婦だったのですが(笑)。

そしてこの妊婦、じゃなくて新婦。
職業は司会者なのです。
披露宴やイベントなどでバリバリ活躍中のプロの司会者なのです。

当然、職場の方々も招かれています。

なのに、二次会の司会を、私にやって欲しいというのです。

「披露宴のスピーチはやるよ。でも司会はダメだよ、いくら二次会でも」

謹んでお断りしました。
当然です。
プロの司会者がたくさんいる前で、素人の私がどうして司会を務めることができましょう。

「披露宴の司会は、プロの仲間に交替でやってもらうの。でも、二次会はプロに頼みたくないの。お願いっ!」

新婦の押しに負けて、結局引き受けることにしました・・。

恥をかいてもいいや。
所詮素人なんだから。
プロのようにできるわけがないのだから。

文字通り開き直りました。

そして、二次会は始まりました。

その二次会でもうひとつ、私は大役を担っていました。

イメージビデオです。

なぜ私が制作することになったのか、正確な経緯は定かではありませんが、画像の編集が好きだったことが高じて、引き受けることになったのでは・・。

内容は、新婦の幼少時代から現在までの写真をつなげたスライドショーです。
しかし、当時はPCソフトでさくっと制作、という時代ではありませんでした。
ビデオデッキにまず音楽を録音し、それから音に合わせて静止画を取り込み、テロップはタイトラーいう専用マシンで入れる、という手間のかかる作業でした。

二次会の中で皆さんにご披露しました。
自分で作った映像を人前で紹介するのは初めてでしたから、非常に緊張しました。
上映中は、妙な汗が止まりませんでした。

上映が終わると、皆さんから暖かい拍手をいただき、ホッとしました。
すると、新婦のお父さんが、泣きながら私に握手を求めてきました。
「感動したよ!やるやるとは聞いていたけど、やるねえ、山田くん!」
新婦の父は、やや酔っぱらっているようでした(笑)。

そして、二次会のエンディング。司会の大役もそろそろ終わりです。
参加者みんなでアーチを作り、新郎新婦を祝福するという企画がありました。

「それでは皆さん、ここから2列に並んでいただけますか?」

と皆さんにお願いをしました。
列が長くなっていくと、ついに会場の反対側にぶつかってしまいました。

・・・反対側までいったら、こちらへ戻るように並んで下さい・・・

頭の中にそんなセリフが浮かびました。
でも、ダメです。禁句です。
「戻る」はNGワードです。

披露宴で使ってはならない言葉って結構あるんですよね。
別離を連想させる「別れる」「切る」「割る」「去る」「帰る」。
再婚を連想させる「戻る」「繰り返す」などなど。

「戻る」がダメなことは認識していました。
「お席にお戻り下さい」ではなく「お席にお着き下さい」と言うんだぞ、とシミュレーションもしていました。

しかし、今回は状況が違います。
向こう側からこちら側に戻ってこなければならないのです。
「こちら側へ戻る」以外になんて表現すればいいのか・・。
「こちら側へ帰ってきて・・」
あ〜、これもダメ。

頭の中、真っ白になりました。
私は適切なボキャブラリーを持ち備えていませんでした。

結局・・・、
「向こう側までいったら、こちら側へ戻るように並んで下さい」
マイクでしゃべってしまいました・・・。

そうしたら、私の近くにいた新婦の職場の同僚、即ちプロの司会者の方が・・・、

「今、司会の方がおっしゃったように、向こう側の壁まで到着したら、
 こちらへUターンして並んで下さい!」

まいりました・・。
脱帽、なんて表現では足りません。
その見事なタイミング、しかも、私に配慮した、優しい言い回し・・。
プロはやっぱりすごかったです・・。

お開きになってから、その方にお礼を申し上げに行きました。

・・口にしてはいけない言葉だとは知っていました。
でも私には適した表現が浮かびませんでした。
助けていただいて有難うございました・・。

すると、

「NGワードと知っているだけですごいことです。全体的にとても立派な司会ぶりでした。間の取り方が上手で、我々プロも勉強になりました。」

上手だったはずがありません・・。
立派な訳がありません・・。

上から目線という言葉がありますが、そんなかけらもありませんでした。
こういう所作ってステキだなあ、と感じました。

あれから、20数年。
まだまだ年齢相応の分別がない自分に、ハッとする思いです。
深く自省が必要です・・。

004 杞人天憂

私、スタバが大好きです。
「グランデサイズのカプチーノ、低脂肪で」
これがいつものセリフです。

今日、日本橋近辺のスタバに行きました。
注文を終えて商品を待っていると、私の前には大柄な外国人男性。
最初は、ふつーに待っていたのですが、突然カウンターに肘をついて、そう、「クイズ100人に聞きました」の関口宏のように肘をついて、店員さんに話しかけました。

話しかけられたのは、20代前半と思しき女性店員さん。
ワタクシ、とっさに思いました。

「店員さん、どうするんだろう・・・」

そしたらその女性店員さん、そんな私の心配をよそに、ネイティブに負けないくらい流暢な発音で、見事な会話のキャッチボールをはじめました。
それはそれは見事なイングリッシュでした。

ハバ ア ナイスデー!

なんて会話を最後に、外国人男性客は笑顔で店を出て行きました。
残されたワタクシ、なんとなく、敗北感を感じていました。

もしかして、あの店員さん、日本人じゃないとか?

ひねくれた、そして根拠レスな思考が頭に浮かんだその時、
「グランデサイズの低脂肪ミルクでお作りしたカプチーノお待ちのお客様ぁ」

ああ、私だ。
しかも、日本語上手・・。
ネームプレート見たら、
「Mariko」。

まちがいなく大和撫子でした。
素敵な店員さんでした。