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095 白面書生

先週末、センター試験が行われました。
志願者数は、約576,000人だったそうです。

私が受験したのは、もう37年も前のこと。
当時は共通一次試験と呼ばれていました。
この試験が導入されるまで、国公立大学は一期校・二期校の中から各1校受験できましたが、共通一次試験によって、1校だけしか受験できないことになりました。
しかも、試験は「5教科7科目、1,000点満点」という、なかなか過酷なものでした。

昭和55年1月12日、試験初日の朝、忘れもしない出来事がありました。
寝ていた2階から階下へ行き、居間のドアを閉めながら「おはよう!」と挨拶した瞬間、入口に提げてあったカレンダーがストーンと落ちたのです。
「おはよう!」「ストーン!」の見事なタイミングは、まるで吉本新喜劇のようでした。
絵に描いたような縁起の悪さに、思わず笑うしかなかったですね。

受験会場は東京大学でした。
東京大学受験しているのであって、東京大学受験している訳ではなかったのですが、構内に入ると「よし、大学生になるぞ!」と気分が高揚した覚えがあります。

ただ、自己採点の結果は、目標の780点には遥かに及ばない、732点でした。
二次試験の出願校判断のため、某予備校に結果を提出したら、化学の偏差値が32でした。
順位は、およそ119,000人中、109,000位。
今年に当てはめれば、576,000人中、527,600位ですか・・・・。
理科は苦手でしたので好成績は望んでいませんでしたが、さすがにこれはショックでしたね。

私は、共通一次試験導入後、2年目の世代です。
従って、大学1年生のとき、1,2年生は共通一次試験組、3,4年生は一期校・二期校組でした。
一期校の東大を目指していたのに、何かの間違いで二期校の横浜国大に入ってしまった上級生と、マークシート方式で答案用紙を適当に塗りつぶす共通一次試験を経て入学した下級生。
出来の違いは、極めて明白でした。

ある講座では、担当教員から真顔でこう言われたこともあります。
「今年の生徒は共通一次試験組ですね・・・・。じゃ、試験問題は易しくしてあげますか。」

「ゆとりですがなにか」の昭和版ってところですかね。

おつむの出来は素晴らしい上級生たちですが、反面、ルックスの悪さも特筆ものでした。
薄汚れたジーンズ、何日も着続けているTシャツ、すり減ったサンダル、黒縁メガネ・・・・。
大変に優秀な先輩たちでしたが、まったく憧れの対象にはなりませんでした(笑)。

そういえば、今年のセンター試験は、今季最強寒波の襲来に見舞われましたね。
私も受験の時、寒さ対策にと、股引を履かされました。
ところが、普段履き慣れないために、下半身の暑さが妙な違和感となりました。

股引は、今や冬の必須アイテムとなったワタシ。
時代の趨勢を感じます・・・・。

094 合縁奇縁

明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。

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上の写真は、昨年も紹介した弊社近くの深川資料館通り商店街に毎年出現する正月飾りです。
どんなイラストが飾られるのか、私の年末の楽しみになっています。
今年は、大きなニワトリのバックに雪をかぶった富士山。そして、松竹梅が描かれています。
江戸時代に貯木場として栄えた地に相応しい、新年に打って付けの目出度い装飾ですね。
お正月を彩ってくれる、地元商店街の皆様に感謝したいと思います。

話は変わりますが・・、
去る1月3日、セガレが1年前まで通っていた学習塾へ、久しぶりに顔を出しました。
目的は、中学受験がすぐ間近に迫った現役生を励ますためです。

自分が生徒の時にも、折に触れて先輩方が激励に来てくれたそうです。
合格の秘訣や失敗談を話してくれたり、入学後の中学生活について聞かせてくれたり、帰り際には、お菓子を配ってくれたのだそうです。

この時期、世間がお正月モード全開なのに対して、「正月特訓」真っ只中の現役生は、お正月気分に浸ることも許されず、塾の休みは元旦だけ。
セガレが受験生の前で有益な話ができるとは思っていませんが、受けたご恩をお返しし、人のために時間を使うことの大切さを教えるには絶好のタイミングと思い、差し入れ用に合格祈願の定番お菓子「キットカット」を買って、塾に向かわせました。

塾が指定した時間は、午前最後の授業がそろそろ終わりに近づく頃でした。
セガレの出番は、生徒たちがお弁当を食べ終わり、午後の授業が始まるまでの時間帯です。
時間が来るまで事務室で待機し、その後、教室で15人ほどの後輩の前で話をしたそうです。

自宅に戻ってから話を聞くと、事務室で待っている間、塾長をはじめ、多くの先生方がセガレを覚えていてくれて、様々お話しが出来たのだそうです。
11ヶ月ぶりに顔を出した卒業生を快く迎えてくれ、先生と生徒という関係でなくなった今もご縁を繋げてくださったことを、とても有難く思いました。

また、偶然にも塾長はセガレの学校の先輩にあたりますので、塾長が通っていた頃の学校と現在との違いなどについて、具体的にお話し出来たことも楽しかったようです。

かつて、遊びたい盛りの小学生を塾に通わせることの是非について迷ったこともありますが、我が家にとっては間違っていなかったのかな、と思いました。

「ご縁」という言葉が私は好きです。
英語にすると「meeting」とか「chance」などが該当するのでしょうか。
でも、微妙なニュアンスが伝わらないですね・・。
やっぱり、日本人に生まれて良かったな、と思います。

083 天潢之派

平成28年10月27日、三笠宮崇仁親王が100歳で薨去されました。
謹んで哀悼の意を表します。

このニュースが報道されたとき、ほとんどのメディアが「薨去」と報じました。
確か、昭和天皇が亡くなられた際は「崩御」と報じられていたはず‥‥。
なぜ表現が異なるのか、ちょっと調べてみました。

崩御(ほうぎょ)
日本の天皇陛下をはじめ、皇帝、国王、太皇太后、皇太后、皇后、その他君主などが亡くなられたとき

薨御(こうぎょ)
皇太子や大臣が亡くなられたとき

薨去(こうきょ)
皇太子妃、親王、親王妃、内親王、または、*位階が三位(正三位・従三位)以上の方が亡くなられたとき

卒去(そっきょ、しゅっきょ) 王、女王、または、位階が四位(正四位・従四位)、五位(正五位・従五位)以上の方が 亡くなられたとき

*位階とは、長く官職にあった者や特に功績のあった者など付与される栄典の一つで、
第二次世界大戦以降は、故人にのみ与えられています。

これはなかなか難しいですね‥‥。

死去・逝去・永眠・他界・鬼籍に入る。
私のボキャブラリーはこの5つくらいでしたが、どれも皇室には使用しないんですね。
しかも、身分によって使い分けなければいけないところが、非常にデリケートだと感じます。
宮内庁のスタッフはこれら難解な用語がすべて頭に入っているとしたら、恐れ入りますね。

その宮内庁のホームページには「用語集」が掲載されています。
これもなかなかヘビーでしたが、とても興味深い内容でしたので、一部をご紹介します(http://www.kunaicho.go.jp/word/)。

・行幸(ぎょうこう)天皇が外出されること
・還幸(かんこう) 天皇が行幸先からお帰りになること

・行啓(ぎょうけい)皇后・皇太后・皇太子・皇太子妃が外出されること。
・還啓(かんけい) 皇后・皇太后・皇太子・皇太子妃が行啓先からお帰りになること。

・行幸啓(ぎょうこうけい)天皇・皇后がご一緒に外出されること
・還幸啓(かんこうけい) 天皇・皇后がご一緒に行幸啓先からお帰りになること。

おそらく、「幸」や「敬」には皇族が外出されるという意味があるのでしょうね。
私の持っている漢和辞典には、掲載されていませんでしたが‥‥。

いずれにしろ、こういった使い分けが理解できたら、新聞記事が楽しくなるかも知れません。
眞子様や佳子様、愛子様がご結婚される際には、目新しい言葉が紙面を飾るでしょうから。
ちょっと勉強してみようと思っています。

【余談】
「鬼籍に入る」は、「はいる」ではなく、「きせきにいる」と読むのが正解です。

080 報恩謝徳

昨年7月から、セガレの中学入試合格祈願のため、あちこち天神様を巡りました。
京都の北野天満宮をはじめ、東京近郊だけでも23ヵ所参りました。

その甲斐あって第一志望校に合格することができ、受験後、間もなく御礼参りを始め、先日、ようやく区切りを付けることができました。

拝殿で手を合わせていると、合格祈願のときは心の余裕がなかったな、と感じました。
御礼参りに出向いて、落ち着いた心境で新たに参拝できたことは収穫でした。

湯島天満宮・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(文京区)
久里浜天神社・・・・・・・・・・・・・・・・・・(横須賀市)
亀戸天神社・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(江東区)
谷保天満宮・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(国立市)
平河天満宮・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(千代田区)
五條天神社・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(台東区)
布多天神社・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(調布市)
西向天神社・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(新宿区)
成子天神社・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(新宿区)
永谷天満宮・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(横浜市)
岡村天満宮・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(横浜市)
牛天神北野神社・・・・・・・・・・・・・・・・(文京区)
荏柄天神社・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(鎌倉市)
千葉天神〈千葉神社摂社〉・・・・・・(千葉市)
新井天神北野神社・・・・・・・・・・・・・・(中野区)
大宮天満宮〈大宮八幡宮摂社〉・・(杉並区)
町田天満宮・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(町田市)
徳丸北野神社・・・・・・・・・・・・・・・・・・(板橋区)
(参拝順)

御朱印をいただいたのは上記18ヵ所です。
櫻木神社(文京区)と北野神社(江戸川区)では、あいにく頂戴できませんでした。

一方、受験が終わってからお参りに伺った天神様もあります。
菅原神社・・・・・・・・・・・・(東京都町田市)
東蕗田天満社・・・・・・・・(茨城県結城郡)
大生郷天満宮・・・・・・・・(茨城県常総市)

これで合計23ヵ所になります。
こんなにもたくさんの天神様でご祈願させていただいたんだ、と感慨深い思いです。
「お主、また来たんか!」と道真公に煙ったがられたかも知れませんが……。

しかし、参拝に訪れたい天神様は、全国にまだまだあります。

やはり、日本三大天神は、ぜひとも制覇したいですね。
北野天満宮には参拝させていただいたので、あとは太宰府天満宮と防府天満宮です。

名古屋三大天神の上野天満宮、桜天神社、山田天満宮もいいですね。
それから、大阪の上宮天満宮と福島天満宮も魅力的です。

忘れてはならないのが、仙台市にある杜の都の天神様・榴岡天満宮です。
「東風吹かば匂ひおこせよ梅の花」
この有名なご詠歌が入った「見開き」の御朱印がいただけるのです。

宮城縣護国神社や大崎八幡宮・亀岡八幡宮も巡りながら、お昼は牛タン、食後は「ずんだ餅」。
そんな目論みを、家族には隠密に、そして、着々と進めています…。

070 切磋琢磨

今日、セガレの中学では1学期の終業式が行われました。
中学生になって、最初の通知表をいただいてまいりました。
私立中学でもありますので、どんな通知表なのか私も楽しみにしていましたが、A4コピー用紙に片面プリントしただけという、やや期待はずれの体裁でした・・。

成績の評点は一旦置いといて(笑)、それよりも、遅刻・早退・欠席がゼロだったことを評価してあげたいと思っています。
起床時間が大幅に早まり、片道1時間以上要する電車通学を親は最も懸念していましたが、そんな中での出席率100%です。元気が一番!と誉めてあげました。
子供の順応性は、親の心配を超えていた、ということでしょうか。

入学してから今日まで、様々な行事がありました。

晴れ晴れしい気持ちで迎えた入学式。
借り物のようなサイズの制服でした。

ちょっぴり怖くて、実は優しい先輩たちと一丸となって戦った体育祭。
結果は最下位でしたが、タテの繋がりを経験できました。
体育祭の翌日に渋谷で打ち上げがあると聞いたときは、ちょっと生意気だなあと感じました(笑)。 

7月には東京地方裁判所ではじめて裁判を傍聴しました。
人定質問、甲号証・乙号証など、専門用語をセガレに教えてもらいました。 

そして、週末からは、長野県での林間学校があります。
8月には、部活の合宿にも初参加します。
9月になると、文化祭もあります。

こうしてみると、学生生活は楽しそうだと、つくづく感じますね。
正直言うと「大人はテストがなくていいよなあ」と子供の頃はよく思ったものでしたが・・。

セガレの通う学校は「面倒見の良い学校」として知られています。
先輩に学び、後輩に伝える環境が醸成されている校風の中で、同級生や先輩、後輩から様々な刺激を受けて、個性を伸ばしていけたら何よりと思います。

未来に夢が広がる子供たちを、まぶしく思います。

065 才弁縦横

弊社のホームページは、山本州さんというデザイナーさんに作成していただきました。
山本さんとは、かれこれ10年ほど前に、あるクライアントさんを通じて知り合いました。
デザインのみならず、イラストも描けるとても器用な方です。

その山本さんが、本の出版に携わり、先日出版されました。
出版記念に山本さんが1冊贈呈してくださったので、そのお礼に本の宣伝を買って出た次第です。

その本とは、ボーンデジタル社発行の「Web+印刷のためのIllustrator活用術」です。

Web+印刷のためのIllustrator活用術

頂戴した本を私も読ませていただきました。

Amazonのレビューでも高評価を得ているとおり、お世辞抜きで、大変わかりやすい解説書です。

イラストレータは既に使っているけれど、WEB領域への活用は無理、という人は多いと思います。
WEB・印刷の両側面から解説されているこの本は、そういう方に非常に有益だと思います。

私も典型的にそのタイプです。
CHAPTER 3とCHAPTER 4はWEBに関する記事だったため、途端に読む速度が下がりました・・。 

一方、イラストレータ初心者にも、お薦めしたいです。
難しいテクニックではなく、はじめの一歩の教則本として非常に有効だと思います。

しかし、考えてみると、「本を発行する」って、ちょっと嫉妬しちゃいますね。
私にはそんなジャンルはないですから・・。

そして、奥付の上にあった著者紹介を読んで驚きました。
山本さん、私より1回り年下の丑年だったんだ・・。

063 大同小異

銀杏と公孫樹についての駄文を書いていたら、卵と玉子の違いに、突如興味が湧きました。
ネットで検索すると、関連サイトがたくさんありました。

どこから引用しようか迷いましたが、国内の鶏卵といえばここ「JA全農たまご株式会社」のオフィシャルサイトにある、たまご通信の記事からご紹介したいと思います。
(http://www.jz-tamago.co.jp)

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本来は、
◎生物学的な意味での「たまご」=卵
◎食材としての「たまご」=玉子
と使い分けがなされています。

生物学な意味での「たまご」とは、子孫を残すために孵化して育つことを前提としたものを指し、魚や虫のたまごも「卵」と書きます。

それに対し、「玉子」は食用を目的としたたまごを指します。
特に鳥類のたまごを指すようです。

つまり、大きな概念として「卵」があり、その中で料理などに使用される鳥類のたまごの総称が「たまご」と表現されます。

現在では、本来は、
◎生の状態のものを「卵」
◎調理されたものを「玉子」
と書くのが一般的なようです。

〈中略〉

明確な基準はないようですが、「卵」の方が広い概念を持ち非常に便利な言葉なようです。
なんとなくわかっていただけたでしょうか・・?

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う〜ん、なんとなくわかったような気がします(笑)。 

生たまごは「生卵」、たまご丼は「玉子丼」です。

生の状態は「卵」、調理されたものは「玉子」という説明通りですね。

たまごを比喩的に用いる場合、例えば「医者のたまご」は「医者の卵」と書きますね。
孵化に例えている訳なので、これも理に適っています。

でも、ゆでたまごは「ゆで卵」、温泉たまごは「温泉卵」ですよね。
調理されたものは「玉子」であるならば「ゆで玉子」「温泉玉子」のような気もしますが・・。

だんだんわからなくなってきたぞ・・。
じゃあ「鮨」と「寿司」はどうなってんだ・・。
寝られなくなりそうだ・・。

057 一言芳恩

今日はセガレの入学式でした。
年度末の繁忙期を抜けたことと社員の協力もあって、私も参列できました。

受験戦争を勝ち抜いた240人の主役たちは、皆、輝いていました。
その中に、ピカピカでブカブカの制服に身を包んだセガレを見つけたとき、中学生になったんだなあ・・・・、と親としては感慨深いものがありました。

そして、いつものことながら、子供の式典への父親の出席率の高さに今日も驚きました。

私もはるか昔、中学受験をしましたが、「受験勉強」に励んだ記憶は皆無です・・・・。
週末は野球ばかりしていましたし・・・・。

一番の思い出と言えば、「私立中学を受験する」ことを周囲に伝えたところ、小学校の担任と、塾の先生から、正反対の言葉が返ってきたことでしょうか。

「受験はやめた方がいいです。受かる見込みはありません。」
こう言ったのは小学校の担任の先生です。
この先生は、4年生から3年間続けて担任だったのですが、とにかく私は反りが合いませんでした。
お前のような不真面目な生徒が合格出来るはずがない、受験料のムダだ、と一蹴されました。

「受験はやめた方がいいです。受かっちゃいますから・・・・。」
塾の先生からは真逆のことを言われました。
その言葉の本意は、受験しようとしたのが大学の付属中学だったからです。

『この学校に行ったら、大学までストレートだぞ。もう、大学を決めてしまうのか?』
『今後の努力によっては、東大に入れる可能性だってあるのに、その扉を閉めてしまうのか?』

この先生は、私を評価してくださり、大層期待を寄せてくださる先生でした。
東大は言い過ぎですが(笑)。

実は、中学1年生のとき、私はクラスで仲間外れにされた時期がありました。
両親も担任も気付かなかったその異変を、唯一、察してくれたのがこの先生でした。
そして、ある日の授業後、私は居残りを命じられました。

山田、お前、学校で何かあったんじゃないか?
最近明らかに元気がない。
そして、元気がなくなってから、成績も変だ。
言いたくなければ言わなくてもいい。
しかし、誰かに相談したいと思ったら、まず、オレのところに来い。

もう40年も前のことですが、この時の光景は鮮明に覚えています。
自分を見てくれている人がいるって、力が湧きますし、勇気が出ますね。
忘れもしません、お名前は松永先生です。
地元に根付いた小さな小さな塾でしたが、私にとっては大切な場所でした。

さて、肝心の中学受験の結果は、見事、不合格。
学校の担任からは「オレは間違ったことは言わない」みたいなことを言われました。
一方、松永先生からは「悔しいかも知れないが、喜べ。」と複雑なお言葉を頂戴しました。

そして、3年後。
高校受験に臨んだ私は、大学の付属校は受験しませんでした。
大学受験でもう一度勝負をしようと決めたからです。
その決意の源は、間違いなく松永先生の言葉でした。

これからの6年間で、恩師と呼べる先生にセガレが出会えることを、切に願っています。

054 白首窮経

先週末、大丸に用事があり、東京駅八重洲パーキング西駐車場に車を停めました。
そして、地下街に上がってくるとすぐ、若い外国人の男性に突然声を掛けられました。
その男性は、地図を私に差し出し、八重洲中央口の先にあるインフォメーションセンターに行きたいと訴えました。

さほど急いでいなかったこともあり、道案内役をすることにしました。
というか、言葉では説明ができなかった、というのが正解です・・。

“OK!  I will take you to the Information Center.”

英語が流暢でないことを隠すため、不自然なほど明るく、そう言いました。
スリムで端正な顔立ちをしたインド系とおぼしき青年は、小さく微笑んでいました。

目的地を目指しながら思いました。この青年は旅行者なのかなあ、と。
スーツケースのような大きなバッグは持っていないけど・・。
これもひとつの出会いです。いろいろ聞いてみたいと思いました。

ひとり旅行で来たの?
日本に来たのは初めて?
好きな日本食はあるの? などなど。

しかし、実際に聞くことができたのは、
“Where are you from?”  だけ。
あとは、黙ってひたすら歩きました・・。

残念ですね、英語ができないと・・。
コミュニケーションをとることができたら、もっと楽しい時間だったのに、と思います。

でも、無事目的地に着くと、彼は笑って握手を求めてきました。

“Have a nice day. Enjoy Tokyo! ”
私はそう言って、握手をし、肩を叩いて別れました。

とてもシャイで寡黙な印象の男性でした。
見知らぬ街で迷い、ナーバスになっていたのかも知れませんね。

因みに「どこから来たの?」という私の質問への答えは、
“Sri Lanka”
でした。

しかも、1回では聞き取れず、“Excuse me?” なんて聞き返してしまいました。
まずは、NHKラジオの基礎英語でも聞きましょうかね・・。

追伸:
白首窮経は「はくしゅきゅうけい」と読みます。
白首は白髪頭、転じて老人。窮経は儒教の経書を究めること。
即ち、年を取るまで、学問に励むことの意です。
肝に銘じたいと思います。

053 万死一生

我が家のセガレは小学校6年生です。
つい先日、中学受験を終え、運良く第1志望の学校から合格をいただきました。

そして、今日、2月11日は、「統一招集日」でした。

これは、一部の私立男子校が同じ日、同じ時間に実施している「合格者招集日」のことで、例年2月11日の13時なのだそうです。

因みに、この招集に応じないと、入学拒否と見なされます。

なぜ、同じ日時に保護者同伴で招集するかというと、学校側が入学予定者数を把握し、定員充足に向けて必要な 「繰上げ合格者」を出すことができるからと言われています。
即ち、この日は、繰り上げ合格連絡の日、でもあるのです。

昭和55年3月、私は、第1志望だった大学の合格発表から漏れました。
遺憾ながら、第6志望の大学への入学を決めました。
入学金に加え、授業料も振り込みました。

その後、高校の同級生とスキーに行きました。
誰がどこに受かったとか、様々な情報が入ってきました。
なんだか、凹みました。
苗場のシングルリフトで寒風にさらされ、いじけたのを覚えています。

スキー旅行から帰宅したその夜、自宅の黒電話が鳴りました。
昼はスキー、夜は麻雀という3泊4日から戻った私は、かなりヘトヘトでした。
家人が誰も電話をとらないので、舌打ちしながら嫌々受話器を取りました。

「はい、もしもし・・。」
「山田様でしょうか。こちら、横浜国立大学経営学部学務課の中村ですが・・・」

ありゃりゃ、受験の時、何かやっちまったかな??
確か、タバコは吸っていないよな??
不正行為なんて、ゼッタイしてないし・・。

瞬間パニックに陥りましたが、電話の趣旨は「繰り上げ合格」でした。

あるんですね。こういうことって。

そして、今日。
塾で親しくさせていただいたお母さんから、一報がありました。
ご子息が開成中学に繰り上げ合格になったと。

18歳の春を思い出しました。
我が事のように嬉しかったです。